2013年9月30日月曜日

新潟仕事人vol.13~「けあーず」坂内机由さん


大きくないから、ちょうどいい。(護摩堂山)
遠すぎなくて、ちょうどいい。(新潟市や燕三条からの交通アクセス)
見渡せるから、ちょうどいい。(遊・YOUランド)

だから田上は、ちょうどいい。
http://www.town.tagami.niigata.jp/

・・・・・
加茂市の上、新潟市南区の下。
そこに、“ちょうどいい”田上町はあります。

今回ご紹介するのは、そんな田上町で、
シルバー人材派遣や、便利屋といったお仕事をされている、
「けあーず」のセンター長、坂内机由(さかうちきよし)さん。

坂内さん(左)と、「あじさい塾」会長・今井さん(右)
坂内さんは、田上町の竹を活用し、まちづくりや里山再生を目指す
「あじさい塾」の会員さんでもあります。


「長く生きていくために、病院で無理をするのではなく、
 思うように生きて、最後を迎える。
 それでいいんじゃないかと思うんだよね。」



そう話してくれた、阪内さん。そうです、けあーずは、
訪問介護&シルバー人材派遣&便利屋を営む会社です。
そんなけあーずさんが、あじさい塾さんと一緒に
イベントに持ってきた商品は・・・

「煤竹(すすたけ)」。


 


「すすたけは、もともとは日本の古民家でできる、
 燻された竹です。

 いろりの煤(すす)によって、吊り下げ部分の竹が
 いぶされ、強く、美しく変化するんです。

 本来は200年ほどの時間をかけて作られる資材で、
 高級品なんですが、田上町は竹の産地ということで、
 約1年ほど前から、煤竹づくりをはじめました。

 これは、竹林の多い田上町の里山再生事業、
 かぐやの里再生計画のひとつです。」
(「あじさい塾」今井会長より)

 


◆◆
あじさい塾さんと一緒に煤竹づくりをしている「けあーず」さん。
えっと、介護関係の会社さんで、間違いないのでしょうか?

「はい。笑
 けあーずは、 訪問介護とシルバー人材派遣業、
 それに便利屋をやっている、民間の会社です。

 うちの基本は「どんな仕事も断らない」。
 掃除、伐採、畑仕事、今年多いのは蜂の巣の駆除、
 依頼があればほとんどなんでもやりますよ。

 田上町はたけのこが特産で、竹林も多い。
 竹は成長が早くて、すぐにやぶになる。

 なので、町の竹林整備の仕事も受けています。
 そんな出会いから、竹を使った商品開発にも
 取り組んでいるんです。

 4年前から干したけのこを作っていますし、
 煤竹も今年からスタートした取り組みです。
  ほら、この煤竹には、
 けあーずのマークも入っているんですよ~!」

 

・・・・・・

どうして、煤竹だったのでしょうか?

「昔、竹炭がブームだったころに
 田上町は竹炭づくりのための窯を作っていたんです。
 これを利用して、竹炭以外のものをつくれないかと。

 開発は、加茂市の新潟県技術研究所に手助けを
 していただいて、ずいぶんとスムーズに進みました。
 竹を燻製する独自の技術で、本来、200年だとか、
 長い長い年月を経て生まれる煤竹を、量産できる
 ようになりました。

 現在の課題は、買い手をみつけること。
 建具屋さんだとか、建築資材、古民家再生やお店の
 ディスプレイなんかに活用してもらえたらいいな、
 協力していけたらな、と思っています。」



・・・・・・

けあーずさんは、どうして「何でもやる会社」になったのでしょうか。

「もともとは、田上町商工部との関係で、研修事業などを行う
 株式会社フィクスという会社からスタートしたんです。
 みんなでお金を積み立てて、何か地域のためになる事業をしようと。

 事業決めに迷っていた時に、私個人の話ではありますが、
 国の人材研修基金というのに参加する機会があったんです。
 そこで私は、オーストラリアの介護現場を見ることになりました。
 平成7年のことでした。

 オーストラリアも日本と同じで、高齢化、核家族化している。
 しかし日本と違うのは、老人ホームの選び方でした。

 日本では、老人ホームは家族が決めることが多いですよね。
 オーストラリアでは、ホームは本人が決めるのが普通。
 まだ元気なうちに、自分たちでホームを見て回って、自分で選んで、
 自分たちの家を処分して、老後はホームに入る。」




・・・・・・
オーストラリアのこの現場を見て、田上町に戻ってきた阪内さん。
平成12年に、けあーずとしての事業がスタート。

「田上町には公営のシルバー人材センターがないんです。
 たまたまだったけど、私が研修でオーストラリアの介護現場を見て、
 それでこの分野のお仕事が始まりました。

 シルバー人材センターは、市町村単位なので、
 住んでいる市町村でしか、登録ができないという壁があります。
 つまり、田上の元気なおじいちゃん・おばあちゃんは、
 働きたくても働く場所がなかったんですよね。

 設立当時の田上町の65歳以上の人口は約2700人。
 最近の定年後の方々は、お元気ですから。
 立ち上げ当初に、登録応募が160名もあって、驚かされました。

 民間でやるのが難しい商売だけど、
働きたいニーズも、仕事のニーズも、両方があったから、
 14年も続けてこられたのだと思います。」
・・・・・・

たしかに、シルバー人材センターというと、
公的機関のイメージです。民間でやることのむずかしさは?

「やはりお値段が高いです。

 でも、その分サービスの質が良い、と言ってもらっています。
 リピートして使って下さる方も多いんですよ。
 現在、シルバー人材の登録者は約160名。
 実際、よく現場に出てくれているのは30名くらい。
 少ないでしょう?
 
 この少ない人数、というのがうちの強み。
 
 みんなの得意分野を把握できていますから
 依頼内容に合った人材を派遣できるんです。

 これが、大きなまちで人数が増えると、
 登録者の能力を把握しきれなくなるわけです。
 仕事を頼んでも、どんな人が来るか分からないから、
 どうしてもアタリハズレがある。

 うちは少人数・小さな地域。
 だからできるサービスがある。」


・・・・・・・
現在の介護、新潟県の介護について、
どんな風に感じていらっしゃいますか?

「長岡にあるこぶし園さんってご存知ですか?
 小規模多機能型居宅介護に取り組んでいる、老人ホームのひとつです。

 小規模多機能型居宅介護への移行と、
 医療関係者の介護に対する正しい理解。
 これからは、その2つが必要とされるのではと思っています。

 例えば、病院ではナースコールを押せば、
 確実に、すぐに、看護師さんが来てくれますよね。
 それを、1小学校区くらいの範囲でできないか、と。

 やっぱり、ぎりぎりまで自宅にいるのが理想ですよね。
 病院や施設で延命するよりも。
 しかし、老々介護や、独居世帯も増えている。
 家族の負担だってある。現実は、厳しいですよね。

 だけど、たとえば、1日1回、地域を何の用がなくても
 巡回(ごあいさつ)するヘルパーさんがいて、
 何か変だぞと思ったら、病院に連れていけるような
 そんな仕組みがあれば、もう少し、変わるんじゃないでしょうか。

 そのためには、病院の中に一定数の介護者用のベッドの
 確保が必要だったり、クリアしなくてはいけない問題も多いですが。」


・・・・・・・
医療関係者からの理解、というのは?


「少し前までは、介護と医療の問題があって、
 ヘルパーの医療行為は今ほど認められていなかった。
 極端な話が、介護の人間は軟膏も湿布も、ぬってあげられなかった。
 介護はあくまで補助、という見方が、まだまだ根強いのが現実です。

 そうではなくて、医療にしかできない範囲があって、
 介護にしかできない範囲がある。サービスをする側も受ける側も、
 その違いを理解して、うまく組み合わせて、お互いに対等な立場で、
 尊重しあえていけたらいいなと思います。

 最近では病院などで介護に対する勉強会などもあって、
 徐々に変わってきたかな、と思います。
 国や県や制度から変わっていくことも、必要だと感じています。」

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介護の仕事は、要介護者が病院へいけば収入はなくなる。
また、収入の面や業務内容などさまざまな面から離職率が高い。
それでも、この仕事を続ける理由とは?

「地域の方々に支えられていると思います。
 便利屋をやっていて、コミュニケーションが密になる。
 ありがとうと言ってもらえるのは、やっぱりうれしい。」



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煤竹ってなんですか?という会話が、
まさか、
介護問題のお話につながるとは・・・

どうしてその商品を作っているのか、
背景にあるのはいつも現実。

日本は超高齢社会。
介護の問題は、親を持つすべての人にとって、
老後の問題は、これから年老いていくすべての人にとって、
切り離せない、現実問題。

今回は、田上町の「けあーず」さんをご紹介しました。